1. なぜ小規模クリニックがサイバー攻撃の標的になるのか?
1.1. 医療データの価値とサイバー攻撃の現状
医療データは、他の個人情報データに比べて非常に重要度、機密度が高く、サイバー犯罪者にとっても狙うべき価値のあるものです。
患者の個人情報、診療記録、保険情報などが一度流出すると、次のような悪用が可能になります:
- 不正請求や医療詐欺:保険情報を使った不正請求が行われる。
- 身元盗用:患者の個人情報を使い、クレジットカードの発行や不正契約がなされる。
- ダークウェブでの売買:医療データは1件あたりで数万円以上の高値で取引されることがあります。
ランサムウェア攻撃も医療機関を特に狙う傾向があり、データを暗号化して解除のための身代金を要求するケースが日本でも急増しています。
診療データが診療業務そのものに不可欠であり、復旧が急務である点を攻撃者は狙っているのです。
1.2. 小規模クリニックが抱える特有のリスク
小規模クリニックは、サイバー攻撃に対する防御が十分に整っていないことが多く、攻撃者にとって「狙いやすいターゲット」と見られています。
具体的なリスクは以下の通りです。
限られたリソース
小規模クリニックは、大病院と比較してIT予算や専門スタッフが不足していることが多く、セキュリティ対策が後回しになりがちです。
レガシーシステムの利用
古い電子カルテシステムや診療機器を使い続けているケースが多く、これらのシステムはアップデートが提供されなくなっており、脆弱性が放置されている可能性があります。
スタッフのセキュリティ意識の低さ
医療スタッフがサイバーセキュリティに関するトレーニングを受けていない場合、フィッシングメールや不審なリンクを開いてしまうリスクが高まります。
セキュリティと診療のトレードオフ
セキュリティを強化することで診療業務が煩雑化することを避けたいという思いから、十分な対策が取られないことがあります。
規模の小ささゆえの油断
「自分たちは小規模だから攻撃されない」という誤った認識により、セキュリティの優先順位を下げてしまうことがあります。
これらの理由から、小規模クリニックはサイバー攻撃の標的になりやすい状況にあります。
しかし、予算や人員に限りがあるからこそ、効果的で実践可能な対策を講じることが求められます。
本記事では、小規模クリニックが取り組むべき具体的な対策を詳しく解説していきます。
2. 医療データを守る10の具体策
具体策1:バックアップを定期的に取り、安全な場所に保管する
データのバックアップは、診療業務を守るための「最後の砦」です。
ランサムウェア攻撃やシステム障害が発生した際、最新のバックアップがあれば、患者情報や診療記録を迅速に復旧し、診療の中断を最小限に抑えることができます。
しかし、小規模クリニックでは、十分なバックアップ体制が整っていないケースも少なくありません。
ここでは効果的なバックアップの取り方について解説します。
オンラインとオフライン、両方のバックアップを活用
まず、バックアップはオンラインとオフラインの両方で行うことが重要です。
オンラインバックアップでは、クラウドサービスを利用することで、災害や物理的なトラブルからデータを守れます。
例えば、火災や洪水が発生しても、クラウド上に保存されたデータには影響がありません。
また、これらのデータは基本的に暗号化され、アクセス制限も施されているため、セキュリティ面でも安心です。
一方、オフラインバックアップは、外付けハードディスクやNAS(ネットワーク接続ストレージ)などのデバイスにデータを保存し、それをネットワークから切り離して保管します。
これは、ランサムウェアがネットワーク内のデバイスをすべて暗号化するリスクを回避するための重要な対策です。
バックアップ頻度と保管場所の工夫
バックアップの頻度については、日々更新される患者データや診療記録は、毎日バックアップを取るのが理想的です。
重要なシステム設定やソフトウェアのデータは、週に一度のバックアップでも十分かもしれません。
また、バックアップデータを保管する場所は安全性を重視し、クラウドであれば信頼できるプロバイダーを選び、オフラインデバイスであれば鍵付きかつ立ち入りの制限された場所に置くようにしましょう。
復旧の手順を整え、緊急時に備える
バックアップがあっても、迅速に復旧できる仕組みが整っていなければ意味がありません。
万が一の事態に備え、復旧手順書を用意しておくとともに、実際にバックアップからデータを復旧するテストを定期的に行いましょう。
これにより、いざという時に慌てず対応できます。
具体策2:スタッフ全員へのセキュリティ教育を徹底する
サイバーセキュリティ対策において、システムやツールだけでは守り切れない部分があります。
それが、日々診療に携わるスタッフの意識と行動です。
どれだけ最新のセキュリティ技術を導入していても、スタッフがフィッシングメールを開いたり、不審なリンクをクリックしてしまえば、システム全体が危険にさらされることになります。
そのため、スタッフ全員へのセキュリティ教育を徹底することは、クリニックを守る上で欠かせない取り組みです。
フィッシングメールやマルウェアの脅威を知る
特に医療機関が標的となるケースで多いのが、フィッシングメールやマルウェアです。
「重要なお知らせ」や「急ぎの対応が必要です」といった件名でメールを送り、添付ファイルやリンクを開かせる手口は非常に巧妙です。
スタッフに対して、次のようなポイントを教育することで、リスクを軽減できます。
- 添付ファイルやリンクをクリックする前に、必ず慎重に確認する。
- 不審なメールの特徴を知る(例:差出人アドレスが不自然、内容が曖昧で緊急性を強調している)。
具体的な事例を交えた研修を行うと、スタッフに危機感を持ってもらいやすくなるでしょう。
セキュリティの基礎知識を共有する
フィッシングメール対策に限らず、スタッフ全員がサイバーセキュリティの基礎知識を共有することも重要です。
例えば、以下のような内容を定期的に学ぶ機会を設けるとよいでしょう。
- 強固なパスワードを設定する方法と管理の仕方。
- ソフトウェアや医療機器のアップデートを怠る危険性。
- 個人情報の取り扱いにおける基本的な注意点。
クリニック内にセキュリティのルールを策定し、それをスタッフ全員で共有することで、セキュリティ意識を高めることができます。
実践的な訓練で「知識」を「行動」に変える
知識を身に付けるだけでなく、それを実際の行動に移せるようにするには、訓練が欠かせません。
例えば、模擬的なフィッシングメールを送って反応を観察する演習を行い、対処法を学ぶ機会を設けるのも有効です。
また、セキュリティインシデントが起きた場合の初動対応をシミュレーションすることで、緊急時にも冷静に行動できるようになります。
具体策3:診療システムのアクセス権を最小限に設定する
サイバーセキュリティにおける「最小権限の原則」は、クリニックの診療システムやデータを守るために非常に重要な考え方です。
この原則は、スタッフや外部業者がシステムやデータにアクセスする際に、「業務遂行に必要な最小限の範囲」でアクセスを許可することを意味します。
これにより、万が一不正アクセスや内部不正が発生した場合でも、影響範囲を最小限に抑えることができます。
最小権限の原則をクリニックに導入するメリット
医療機関では、医師や看護師、受付スタッフなど、職種ごとに必要な情報やシステムへのアクセス範囲が異なります。
最小権限の原則を適切に実施することで、次のようなメリットがあります。
- 不正操作の防止:業務に不要なデータや機能へのアクセスを遮断することで、意図的な不正行為や誤操作のリスクを低減します。
- 情報漏洩リスクの軽減:患者情報や診療記録へのアクセスを制限することで、万が一アカウントが乗っ取られた場合でも、流出する情報の範囲を抑えられます。
アクセス権の具体的な設定方法
役割に基づいたアクセス権限の設計
各スタッフの役割ごとに、必要な情報や機能を明確にし、それ以外のアクセスを制限します。
たとえば、受付スタッフには予約情報のみを閲覧可能にし、患者の詳細な診療記録にはアクセスできないようにする設計などが最低限必要となってきます。
外部業者や非常勤スタッフの管理
外部業者や非常勤スタッフなど、頻繁にアクセスする必要がない場合は、一時的な権限のみを付与し、作業終了後には速やかにアクセスを解除するルールを徹底します。
ログイン履歴の監視で不審な動きを察知する
アクセス権を適切に管理するだけでなく、実際のログイン履歴を定期的に確認し、不審な動きがないかを監視することも重要です。
たとえば、次のような動きを早期に発見することで、被害を最小限に抑えることができるでしょう。
- 通常勤務時間外のログイン
- 業務に関係のないデータへのアクセス
- 同一アカウントによる複数拠点からの同時アクセス
監視ツールやアラート機能を活用することで、こうした異常な動きをリアルタイムで把握できるようになります。
具体策4:強固なパスワードポリシーと多要素認証の導入
サイバー攻撃の多くは、弱いパスワードや盗まれた認証情報を利用してシステムに侵入することから始まります。
そのため、強固なパスワードポリシーと多要素認証(MFA: Multi-Factor Authentication)の導入は、医療データを守る上で非常に効果的な防御策となります。
これらの対策を組み合わせることで、単一の認証情報が漏えいしても不正アクセスを防ぐことが可能です。
強固なパスワードポリシーを策定する
まず、クリニック全体で安全なパスワードのルールを策定し、全スタッフがそれを遵守する仕組みを作ることが重要です。
理想的なパスワードの条件は以下の通りです。
- 長さ:8文字以上(できれば12文字以上)に設定。
- 複雑性:英大文字、小文字、数字、記号を含む。
- ID同一値不可:ログインに必要なユーザIDと同一の値は設定不可とする。
他システムと同様のパスワードを使用している場合、不正ログインの脅威があるため、定期的なパスワード変更を推奨します。
ただし、頻繁すぎる変更は逆にスタッフが単純なパスワードを選びがちになるため、変更頻度は1年程度で十分です。
多要素認証(MFA)の効果と導入
強固なパスワードと組み合わせることで、さらに安全性を高めるのが多要素認証です。
MFAは、次のいずれかを組み合わせることで認証プロセスを強化します。
- 知識要素(パスワードなど、知っている情報)
- 所有要素(スマートフォンや認証アプリなど、持っている物)
- 生体要素(指紋や顔認証など)
たとえば、診療システムにログインする際、パスワードを入力した後にスマートフォンで生成されるワンタイムパスワード(OTP: One-Time Password)を入力する仕組みを導入することで、たとえパスワードが漏えいしても不正アクセスを防げます。
具体策5:ネットワークのセキュリティを強化する
医療機関では、診療データや患者情報を含むネットワークへの不正アクセスを防ぐことが重要です。
Wi-Fi環境の見直しやファイアウォール、VPNの活用など、基本的な施策を徹底することで、クリニック全体のセキュリティを向上させることができます。
安全なWi-Fi環境を構築する
Wi-Fiネットワークは、多くの医療機関でスタッフの業務や患者向けのサービスに活用されています。
しかし、適切な設定がされていない場合、外部からの侵入のリスクを生む可能性があります。
次のポイントを確認して、安全なWi-Fi環境を構築しましょう。
強固なWi-Fiパスワードを設定する
短くて単純なパスワードではなく、長く複雑なパスワードを使用します。
定期的にパスワードを変更し、古いパスワードが残らないようにします。
最新の暗号化方式を使用する
Wi-Fiのセキュリティプロトコルとして、古いWEPやWPAではなく、より安全なWPA3を利用します。
ゲスト用ネットワークを分離する
診療データを扱うメインのネットワークと、患者や訪問者が利用するゲスト用ネットワークは必ず分離しましょう。
これにより、以下のようなリスクを回避できます。
- ゲストネットワーク経由での不正アクセス。
- 診療ネットワークへの誤接続によるセキュリティ事故。
具体的には、ネットワークを物理的または仮想的に分離し、診療業務に関連するデバイスがゲストネットワークを経由しないように設定します。
また、ゲスト用ネットワークは必要に応じて時間制限を設けるなどの運用も検討してください。
ファイアウォールで外部からの侵入を防ぐ
ファイアウォールは、外部からの不正アクセスを防ぐための重要な防御策です。クリニックのネットワークに適切なファイアウォールを導入することで、不審な通信や攻撃をブロックできます。
特に、次の点を確認しましょう。
- ファイアウォールの設定を最新の状態に保つ。
- 診療システムやデバイスへのアクセスを許可するIPアドレスやポートを制限する。
多くのファイアウォール製品には、不審な通信を検知した際にアラートを送る機能があるため、これを有効活用することで、早期の対応が可能になります。
VPNで安全な通信を確保する
クリニック内だけでなく、リモートでシステムにアクセスする際にも、通信を安全に保つためにVPN(Virtual Private Network)の利用を検討しましょう。
VPNを利用することで、以下の利点があります。
- 通信の暗号化:第三者に通信内容が傍受されるリスクを大幅に低減します。
- セキュリティ向上:リモートアクセスの安全性を確保し、外部からの不正アクセスを防ぎます。
例えば、非常勤の医師や外部業者がシステムにアクセスする際には、必ずVPN経由で接続させることで、診療システムのセキュリティを保つことができます。
具体策6:医療機器やソフトウェアのアップデートを欠かさない
医療機器や診療システムのソフトウェアは、患者情報を取り扱う上で欠かせないツールです。
しかし、これらの機器やソフトウェアが最新の状態で保たれていなければ、セキュリティ上の大きなリスクを生む可能性があります。
特に、サイバー攻撃者は古いバージョンのソフトウェアに潜む既知の脆弱性をまず初めに狙います。
そのため、定期的なアップデートを行い、システムの安全性を維持することが不可欠となってきます。
セキュリティパッチの適用と最新状態の維持
ソフトウェアや機器メーカーは、定期的にセキュリティパッチやアップデートをリリースしています。
これらのアップデートには、発見された脆弱性への対応策が含まれていることがほとんどです。
これを適用せずに放置することは、「ドアを開けっ放しにしている」のと同じで、簡単に外部から侵入されうる状態になっています。
自動アップデートの設定や、アップデートの定期実行ルールを決めて、アップデートを欠かさないようにしましょう。
レガシーシステムがもたらすリスク
多くの小規模クリニックでは、運用コストの制約から古いシステムや医療機器を使い続けている場合があります。
しかし、これらの「レガシーシステム」は、サポートが終了していることが多く、脆弱性が修正されないためサイバー攻撃のターゲットになります。
レガシーシステムの具体的なリスク:
- ランサムウェアやマルウェアが狙いやすい環境を生む。
- セキュリティパッチの提供が終了しているため、既知の脆弱性が放置される。
- 新しい機器やソフトウェアとの互換性が低く、運用が複雑化する。
レガシーシステムへの対応策
レガシーシステムを完全に置き換えることが難しい場合でも、リスクを最小限に抑えるための対策をとることが可能です。
- ネットワークの分離:レガシーシステムを診療ネットワークから分離し、外部との接続を極力制限する。
- 代替策の検討:必要に応じて、新しいシステムへの部分的な移行を計画し、徐々に切り替える。
- 監視体制の強化:レガシーシステムを監視するセキュリティツールを導入し、異常な挙動を早期に検出する。
具体策7:リモートワークや外部アクセスのセキュリティを確保する
リモートワークや外部からのシステムアクセスが増える中、これらの環境を適切に保護することは、医療機関のセキュリティを維持する上で欠かせません。
小規模クリニックでも、非常勤の医師や外部業者がリモートでアクセスすることがある場合、適切な対策をとることで患者データや診療システムを守ることができます。
リモートアクセスのリスクを理解する
リモートアクセスには、通信の盗聴や不正アクセスのリスクが伴います。
例えば、公共のWi-Fiを利用した場合、通信が暗号化されていないと第三者に通信を盗聴される危険があります。
また、外部端末のセキュリティが不十分だと、そこからウイルスやマルウェアが侵入する可能性もあります。
こうしたリスクを回避するためには、明確なルールと技術的な対策を組み合わせることが必要です。
リモートアクセスのルール化
リモートアクセスを安全に運用するには、まずクリニック内でルールを明確化することが重要です。
以下は基本的なルールの例です。
- 許可されたデバイスのみアクセスを認める:クリニックが承認したデバイス以外からのアクセスは禁止します。
- 認証プロセスの厳格化:リモートアクセスには、多要素認証(MFA)を必須とし、パスワードだけでログインできないようにします。
- アクセス時間の制限:業務時間外や必要のない時間帯のリモート接続を制限します。
これらのルールを明文化し、全スタッフに周知徹底することが重要となります。
VPNの利用で通信を暗号化
リモートアクセス時には、必ずVPN(Virtual Private Network)を利用して通信を暗号化しましょう。
VPNを使用することで、通信データが暗号化されるため、たとえ公共のWi-Fiを利用しても情報が第三者に盗み取られるリスクを大幅に軽減できます。
具体的には以下の手順で導入・運用を行います。
- 信頼性の高いVPNサービスを選ぶ:無料のVPNはセキュリティに不安があるため、有料で信頼できるサービスを選びます。
- 常時VPNを使用するルールを徹底:スタッフがリモートで診療システムにアクセスする際、必ずVPNを使用するように指導します。
- ログの監視:VPNの使用状況を定期的に確認し、不審なアクセスがないかを監視します。
使用端末のセキュリティをチェックする
外部からアクセスする端末そのものが感染源となるケースも少なくありません。
使用する端末については、次のようなチェックを行いましょう。
- 最新のセキュリティアップデートが適用されているか
- ウイルス対策ソフトが導入されているか
- 不要なアプリケーションのインストールを制限
また、端末の紛失時に備え、リモートでデータを削除できる仕組みを整えておくと安心です。
具体策8:不審な動きを検知する監視システムを導入する
サイバー攻撃の進化に伴い、クリニックのセキュリティ体制も単に防御を固めるだけでなく、システムの異常を素早く検知する能力が求められるようになっています。
特に、ランサムウェアや内部不正のような攻撃は、初期段階で検知できれば大きな被害を未然に防ぐことが可能です。
そのため、診療システムやネットワーク全体を監視する仕組みを導入することが重要です。
監視システムの重要性
クリニックでは、患者データや診療情報が日々やり取りされています。これらにアクセスする動きをリアルタイムで監視し、不審な挙動があればすぐにアラートを出すシステムを導入することで、セキュリティ体制を強化できます。
監視システムは次のような脅威を検知するのに役立ちます。
- 通常では考えられない時間帯のログイン
- 業務範囲外のデータにアクセスする通信
- ネットワーク上で大量のデータが急に転送される挙動
これらの異常な動きを早期にキャッチし、攻撃の兆候をいち早く発見できるのが監視システムの強みです。
アラートや自動防御機能を備えた仕組みを導入する
監視システムにはアラート機能や自動防御機能を備えたものを選ぶことが推奨されます。
特に、小規模クリニックでは人的リソースが限られているため、次のような機能が役立ちます。
- 異常検知のアラート通知:システムの異常を検知した際に、すぐに管理者に通知。
- 自動ブロック機能:特定のIPアドレスや不審なアクセス元を検知した際に、自動的に接続を遮断。
これらの機能を活用することで、クリニックスタッフが手動で対応する時間や手間を大幅に削減できます。
クリニックに適した監視体制の構築
監視システムを導入する際には、クリニックの規模やリソースに応じた現実的な設計を心がけることが重要です。
中小規模のクリニックであれば、以下のような工夫が考えられます。
- 外部のセキュリティ専門家と連携し、異常時の対応を迅速化する。
- 手軽に導入できるクラウド型の監視サービスを活用する。
- 初期費用を抑えたサブスクリプション型のサービスを選択する。
サイバー攻撃は高度化・多様化しているため、特に外部のセキュリティ専門化との連携は非常に重要となってきます。
具体策9:ガイドラインや法令に基づいた管理体制を構築する
医療機関が取り扱う患者データや診療情報は、極めて重要な個人情報です。
そのため、サイバーセキュリティ対策を進める上では、技術的な取り組みだけでなく、法令やガイドラインをしっかり遵守した管理体制を構築することが求められます。
特に、日本国内では厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」や個人情報保護法がその基準となります。
厚生労働省の「医療情報システム安全管理ガイドライン」を実践
このガイドラインは、医療機関が医療情報を安全に管理し、システムの安定運用を確保するための指針を示しています。
小規模クリニックでも、以下の基本的なポイントを押さえることで、セキュリティを向上させることができます。
- リスク分析とセキュリティ対策の策定
- クリニックの情報システムや医療機器が抱えるリスクを定期的に分析し、それに基づいたセキュリティ対策を計画・実施します。
- アクセス権限の管理
- 必要最小限のスタッフだけが医療情報にアクセスできるように権限を設定します。
- 運用体制の整備
- セキュリティポリシーや運用ルールを文書化し、スタッフ全員が理解できる形で共有します。
このガイドラインは医療機関の規模や状況に応じた柔軟な対応を認めていますので、クリニックの実情に合った形で実践できる内容を優先しましょう。
個人情報保護法の遵守
日本の個人情報保護法は、患者のプライバシーを守るための基本的な枠組みを提供しています。
クリニックがこの法令を遵守するために必要な運用は次の通りです。
- 適切な情報収集と利用:患者データは診療目的に限定して収集・利用することを徹底します。不要なデータ収集を避けることが重要です。
- データの第三者提供に関するルール:データを外部に提供する場合、患者の同意を得ることが原則です。同意の記録をしっかりと残しましょう。
- データ保管と削除のルール設定:必要以上に長期間データを保存しないようにし、不要になったデータは安全に削除します。
具体策10:セキュリティ専門家や外部サービスを活用する
小規模クリニックでは、サイバーセキュリティに関する専門知識や専任スタッフが不足しがちです。
医療データを狙った攻撃が増加する中、自力で全てのセキュリティ対策を行うのは現実的ではありません。
そこで、セキュリティ専門家や外部サービスの力を借りることが、クリニック全体のセキュリティを効率的かつ効果的に向上させる鍵となります。
セキュリティ診断の依頼や脆弱性チェックの実施
セキュリティ診断は、クリニックのシステムやネットワークに潜む脆弱性を発見し、適切な対策を講じるための第一歩です。専門家に依頼することで、自分たちでは気づきにくい問題点を洗い出し、効果的な改善策を得ることができます。
診断内容の例:
- ネットワーク構成の見直し(ファイアウォールやVPN設定の最適化)。
- 医療機器や診療システムに存在する脆弱性のチェック。
診断結果を元に優先順位をつけて対策を講じることで、効率的にリスクを軽減できます。
また、定期的に診断を依頼することで、最新のセキュリティ基準に合わせて対策をアップデートできます。
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セキュリティコンサルティングの導入
クリニック全体のセキュリティを体系的に向上させるためには、セキュリティコンサルティングを受けることも効果的です。
専門家が現状を分析し、適切な対策の計画と実行をサポートしてくれます。
コンサルティングで期待できる成果:
- 長期的なセキュリティ計画の策定:リソースに合わせた優先順位づけ。
- 運用ルールの最適化:ガイドラインや法令に基づいた管理体制の構築。
- スタッフ研修の設計と実施:医療現場に特化したセキュリティ教育の提供。
また、最新の脅威や技術トレンドを反映したアドバイスを継続的に受けられるため、時代遅れの対策にならない点も大きなメリットです。
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まとめ:10の具体策で医療機関のセキュリティを強化し、患者の信頼を守る
医療機関が直面するサイバーセキュリティの課題は、決して大病院だけの問題ではありません。
今回ご紹介した10の具体策は、限られたリソースでも実践可能なものばかりです。
バックアップの徹底やスタッフ教育から始め、監視システムの導入や専門家の支援を活用することで、より安全な診療環境を実現できます。
セキュリティ対策を適切に行うことは、単にデータを守るだけでなく、患者の信頼を守り、医療機関としての社会的責任を果たすことにもつながります。
特に法令やガイドラインの遵守、最新の脅威への対応を怠らないことが、診療業務の継続性と安心感を支える鍵となるでしょう。
トリプルAのサポートで安心した病院運営
トリプルAでは、医療機関向けに特化したセキュリティコンサルティングサービスや脆弱性診断を提供しています。
医療情報システムの安全管理ガイドラインへの対応や、個々のクリニックの状況に応じた実践的なアドバイスを行うことで、セキュリティの課題を効率的に解決します。
セキュリティに関する不安や、どこから対策を始めればよいか迷われている方は、ぜひトリプルAにご相談ください。
今こそ、サイバーセキュリティ対策を「コスト」ではなく「投資」として捉え、クリニックの安全性と信頼性を高めるための一歩を踏み出しましょう。