ゼロからわかるSTRIDEモデル:サイバー脅威を見える化するための基本ガイド

1. STRIDEモデルとは


サイバーセキュリティの分野で重要な脅威モデルの1つとして知られる「STRIDEモデル」は、Microsoftによって提唱され、システムやアプリケーションの脅威を体系的に評価するために活用されています。
STRIDEモデルは、セキュリティリスクを構造的に識別し、特定の攻撃手法に対してどのように防御を固めるべきかを明確にするために役立ちます。
特に、Webアプリケーション、クラウドサービス、IoTデバイスなど、セキュリティの脅威にさらされやすいシステムやサービスに対して適用されるケースが多く見られます。

1.1. STRIDEの6つの脅威カテゴリー

STRIDEという名称は、以下の6つの脅威カテゴリーの頭文字を取ったものです:

  • Spoofing(なりすまし):不正なユーザーが正規ユーザーのふりをする行為。これにより、認証情報を乗っ取られたり、アクセス制御をすり抜けられる可能性があります。
  • Tampering(改ざん):データやシステムの設定が不正に変更される行為。システムの整合性を損ない、データの信頼性が低下します。
  • Repudiation(否認):ユーザーが自身の行動を否認する可能性。証拠が不十分な場合、悪意のある行動を取ったユーザーが責任を回避できてしまいます。
  • Information Disclosure(情報漏洩):機密データや個人情報が外部に漏れるリスク。適切なアクセス制御が行われていないと、情報漏洩につながります。
  • Denial of Service(サービス拒否):システムやサービスが過負荷状態にされ、正常に機能しなくなるリスク。サービスの停止や遅延を引き起こす可能性があります。
  • Elevation of Privilege(権限昇格):攻撃者が通常のユーザー権限から管理者権限に不正に昇格する行為。これにより、システム全体へのアクセス権を持つようになり、破壊的な行動が可能になります。

1.2. STRIDEモデルが重要な理由

サイバーセキュリティにおいて、脅威はシステムの信頼性や機密性、可用性に直接影響を与えます。
STRIDEモデルを活用し、システムの脅威モデリングを作成することで、早期に対策を立てることが可能になります。
また、脅威の種類を明確に分類することで、各脅威に対して適切な防御策を講じやすくなるため、システムの安全性を向上させる上で非常に有用です。

2. STRIDEモデルの実践的活用法


STRIDEモデルは脅威の特定と分析に非常に有効であり、特にシステムやアプリケーションの開発プロセスにおいて、その効果を発揮します。
STRIDEモデルを用いた脅威分析の実践的な手順を解説し、具体的な適用例について紹介していきます。

2.1. STRIDEモデルによる脅威分析のステップ


STRIDEモデルを効果的に活用するためには、脅威分析の基本的な流れと各ステップを把握することが重要です。
ここでは、STRIDEモデルによる脅威分析を実施する際の具体的な手順について説明します。

2.1.1. 分析対象の選定

まず、脅威分析を行う際には、どのシステム、アプリケーション、コンポーネントが分析対象であるかを決定します。
一般的には、新規に開発中のシステムや、特にセキュリティリスクが懸念される部分が対象となります。
分析対象を明確に定めることが、脅威分析の一歩目です。

2.1.2. 各脅威カテゴリーの適用方法

対象が決定したら、STRIDEモデルの6つのカテゴリー(Spoofing, Tampering, Repudiation, Information Disclosure, Denial of Service, Elevation of Privilege)を順番に適用し、脅威を洗い出します。

  • Spoofing(なりすまし):認証が必要なシステムなら、なりすましの可能性を検討します。例えば、認証情報の管理方法や、侵入防止対策が適切かを確認します。
  • Tampering(改ざん):システム内のデータや通信が改ざんされるリスクを評価します。データの整合性が保たれているか、暗号化や署名が行われているかをチェックします。
  • Repudiation(否認):ユーザーが後から自身の行動を否認するリスクに対して、ログや証跡が十分に記録されているかを確認します。
  • Information Disclosure(情報漏洩):機密性のあるデータが外部に漏れるリスクを評価します。アクセス制御や暗号化の強度、データの取り扱いにおいて、漏洩リスクがないかを検討します。
  • Denial of Service(サービス拒否):システムが過負荷や外部からの攻撃でダウンするリスクを分析します。負荷分散や、DDoS対策などの可用性確保手段が十分であるかを確認します。
  • Elevation of Privilege(権限昇格):通常のユーザーが不正に権限を取得するリスクに対して、適切なアクセス制御が行われているかを評価します。


これらの手順を通して、システムに潜む脅威を総合的に洗い出し、適切な対策を考慮します。

2.2. 脅威分析の実例


実際の企業や業界では、STRIDEモデルをどのように活用しているのでしょうか。
ここでは、一般的な企業や業界での適用例、そして特にWebアプリケーションやIoTシステムのようなセキュリティリスクが高いシナリオでの活用について紹介します。

2.2.1. 企業や業界におけるSTRIDEモデルの適用例


例えば、金融機関や医療機関など、機密性の高い情報を取り扱う業界では、情報漏洩や権限昇格のリスクが特に注目されています。
STRIDEモデルを用いて、情報システムやネットワークの脅威分析を行い、各カテゴリーに該当するリスクを特定した上で、システムの強化に役立てています。
こうした業界では、特に情報漏洩とサービス拒否(DoS)対策が重要視されています。

2.2.2. Webアプリケーションにおける適用例


Webアプリケーションは、常にインターネットに接続されているため、様々な脅威にさらされるリスクが高いです。
例えば、なりすまし(Spoofing)のリスクを軽減するために、多要素認証を導入するケースが増えています。
また、サービス拒否(DoS)攻撃を防ぐため、クラウドベースのDDoS防御サービスを併用し、可用性を確保する対策も行われています。

2.2.3. IoTシステムにおける適用例


IoTデバイスは、リソースが限られているため、特に改ざん(Tampering)や権限昇格(Elevation of Privilege)のリスクが問題になります。
例えば、IoTデバイスに対して、ファームウェアの改ざんを防ぐための署名確認や、最低限のアクセス制御ポリシーを設定するなどの対策がとられています。

まとめ


本記事では、サイバーセキュリティにおける脅威モデリングの基本として、STRIDEモデルの概要と活用方法について解説しました。
STRIDEモデルは、システムのさまざまな脅威を6つのカテゴリーに分類し、それぞれに応じた対策を立てるための強力なフレームワークです。
このモデルを活用することで、脅威を事前に可視化し、リスクを低減するための具体的な対策を早期に講じることが可能になります。

弊社では、STRIDEモデルを活用した脅威モデリングのコンサルティングサービスを提供しており、各企業のニーズや環境に合わせた脅威分析とリスク対策の提案を行っています。
WebアプリケーションやIoTシステムなど、あらゆるシステムの安全性向上に貢献しており、特に厳重なセキュリティ管理が求められる業界から多くのご相談をいただいております。
弊社の専門チームが貴社のセキュリティ強化を全面的にサポートいたしますので、STRIDEモデルを用いた脅威分析やリスクマネジメントに関するご相談がございましたら、ぜひお問い合わせください。

貴社のシステムの安全性向上に向け、共に最適な対策を見つけてまいりましょう。

上部へスクロール