中小企業向け社内セキュリティのベストプラクティス


「サイバー攻撃は大企業に対する攻撃」という考えは過去のものとなりました。
最近では、中小企業も狙われるケースが非常に増えています。
その理由は、規模の小さい企業ほどセキュリティ対策が不十分で、攻撃者にとって「侵入しやすい入口」となるためです。
また、サプライチェーン攻撃の一環として、大企業のパートナー企業や下請け企業が標的になるケースも珍しくありません。


さらに、中小企業が受けるダメージは、大企業よりも深刻です。
たとえば、ランサムウェア攻撃で顧客情報が漏えいした場合、その信頼を回復するのは容易ではなく、事業存続すら危ぶまれる可能性があります。
また、業務停止やデータ復旧に伴うコスト、損害賠償による金銭的コストは経営に大きな損害を与えます。


サイバー攻撃に備えたセキュリティ管理は、単なるコストではなく、事業を守るための「投資」です。
本記事を参考に、明日から取り組める施策を見つけてみてください。


1. 社内セキュリティの現状とよくある課題

1.1. 中小企業が直面する脅威


中小企業が直面する代表的な脅威には、以下のようなものがあります。

  • ランサムウェア攻撃
    企業の重要データを暗号化し、復旧のために身代金を要求する攻撃。復旧できない場合、顧客情報の流出や業務停止のリスクが高まります。
  • フィッシング
    従業員をだまして機密情報を入力させたり、マルウェアをダウンロードさせたりするスパムメールによる攻撃です。
  • 内部不正やデータ漏えい
    従業員や退職者による意図的・過失による情報漏えいも大きな課題です。


さらに、最近ではリモートワークの普及により、自宅のネットワークや個人デバイスの使用が増え、セキュリティが脆弱になるケースが増えています。



1.2. よくあるミスとそのリスク


多くの中小企業は、コストやリソースの観点から、最低限のセキュリティ対策に留まっていることが少なくありません。
しかし、投資を惜しむことで大きな被害を引き起こすこともあります。

  • 弱いパスワードの使用
    多くの企業で、単純なパスワードが使われ続けていることが問題になっています。「123456」や「password」などの脆弱なパスワードは、攻撃者にとって簡単すぎる侵入口となります。
  • セキュリティポリシーの未整備
    社内でのデータ取り扱いやアクセス権限に関する明確なルールがないと、意図しない情報漏えいのリスクが高まります。また、中小企業ではポリシーがあっても、従業員に共有されていないケースも多く見られます。
  • ソフトウェアやシステムの更新不足
    古いバージョンのソフトウェアを使い続けると、既知の脆弱性が狙われるリスクが高まります。自動アップデートを有効にしていない企業も多く、結果的に攻撃者の標的となりやすくなります。


2. セキュリティ強化の基本ステップ


効果的なセキュリティ対策を実施するためには、段階的かつ計画的な取り組みが不可欠です。
ここでは、社内セキュリティを強化するための基本ステップを紹介します。


2.1. リスクアセスメントの実施


最初に取り組むべきは、自社が直面するリスクを明確にすることです。
自社内にどのような情報資産が存在するかの洗い出しをします。
その後、どの情報資産やシステムが最も重要かを把握し、それに対してどのような脅威が存在するかを分析します。

  • 守るべき資産の特定
    顧客データ、業務システム、財務情報など、事業に不可欠なものをリストアップします。
  • リスクの評価と優先順位の設定
    脅威が与える影響と、その発生可能性を評価し、対策の優先度を決定します。
  • 現状のギャップ分析
    現在のセキュリティ対策を見直し、どの部分が強化を必要としているかを明らかにします。


2.2. セキュリティポリシーの策定と運用


次に、組織全体で統一されたルールを定めるため、セキュリティポリシーを策定します。
セキュリティポリシーを策定することで、従業員が守るべき基準が明確になり、ルールのもとでセキュリティを管理することができるようになります。

  • ポリシーの作成ポイント
    • パスワードの強度
    • デバイスの使用ルール
    • データの保存・削除のガイドライン
    • 外部アクセスやリモートワーク時のセキュリティ要件
  • 全社員への共有と教育
    策定したポリシーは、マニュアルとして配布するだけではなく、社内研修などを通じて全社員に理解・浸透させます。
  • ポリシー違反時の対応フロー
    セキュリティルールが守られなかった場合の対応プロセスを明確に定義し、従業員の責任を可視化します。


2.3. 社内環境の整備と管理体制の構築


策定したセキュリティポリシーに基づいて、社内のIT環境を整備し、適切な管理体制を構築します。

  • アクセス権限の最小化
    従業員が業務に必要な範囲内でしかシステムやデータにアクセスできないよう制限します。これにより、内部不正や情報漏えいのリスクを低減します。
  • データのバックアップとリカバリ計画
    データ損失やシステム障害に備え、定期的なバックアップと迅速なリカバリ手順を用意しておきます。リカバリの実践演習も行っておくと、より効果的でしょう。
  • 定期的な監査とレビュー
    セキュリティ対策の有効性を定期的に監査し、改善点を見つけて更新します。年に一度程度の頻度でもよいので、今行っている対策が有効であるか、ルールが適切であるかなどの見直しをすることは大切です。




このように、リスクアセスメントからポリシー策定、そして継続的な改善に至るまで、一連のプロセスを段階的に実施することが、堅牢な社内セキュリティの基盤を築くためのカギとなります。
少し面倒であるように感じる部分も多いとは思いますが、自社をサイバー脅威から守る上では最低限必要なものとなっております。
自社内のみで行おうとせず、サイバーセキュリティ企業に相談し支援をしてもらうことで、適切な管理体制の構築を検討してみてもよいでしょう。


3. 技術的対策のベストプラクティス


効果的な社内セキュリティを実現するためには、技術的な対策が不可欠です。
技術的なツールやソリューションを活用することで、脆弱性を減らし、攻撃に対する防御力を高めることができます。
この章では、特に中小企業が実践しやすい技術的なセキュリティ対策のベストプラクティスを紹介します。


3.1. パスワード管理と多要素認証(MFA)の導入


パスワード管理は、最も基本的かつ重要なセキュリティ対策の一つです。
しかし、記憶のしやすさから、多くの従業員が容易に推測できるパスワードや同じパスワードを複数のサービスで使い回すケースが少なくありません。
この事態を防ぐためには、以下の対策が効果的です。

  • パスワードマネージャーの導入
    複雑で長いパスワードを安全に管理するため、パスワードマネージャーを活用しましょう。これにより、従業員が覚えやすい簡単なパスワードを使う必要がなくなり、強固なパスワードを使う習慣を促進できます。
  • パスワードポリシーの強化
    強力なパスワードポリシーを設定し、複雑性を確保します。例えば、8文字以上の長さ、英数字と記号の混在を必須にするなどが有効です。
  • 多要素認証(MFA)の導入:多要素認証(MFA)の導入は、パスワードだけに依存しないセキュリティを実現します。MFAでは、パスワードに加えてスマートフォンなどのデバイスを使った追加認証が必要になるため、万が一パスワードが漏えいしても、容易に不正アクセスされるリスクを大幅に低減します。ツールの導入が必要となるため、各企業において投資判断が必要となります。



3.2. ウイルス対策ソフトの活用


ウイルス対策ソフトは、ウイルスやマルウェアからシステムを保護するための基本的なツールです。
最新の脅威にも対応するため、必ず最新の状態にアップデートしておくことが重要です。

  • リアルタイム保護の有効化
    リアルタイムでシステムを監視し、マルウェアや不正なプログラムを即座に検出・隔離できるように設定します。
  • 定期的なスキャンの実行
    全社的に週次または月次のスキャンを自動で実行し、潜在的な脅威を検出します。特に重要なファイルやシステムには、優先的に注意を払いましょう。



3.3. システムとソフトウェアの定期アップデート


システムやソフトウェアの脆弱性を放置すると、攻撃者に利用されるリスクが高まります。
使用しているソフトウェアのバージョンを確実に把握し、定期的なアップデートを習慣化する必要があります。

  • 自動アップデートの設定
    可能な限り、OSやソフトウェアの自動アップデートを有効にし、脆弱性パッチが公開され次第、即座に適用されるようにします。
  • サポート切れソフトウェアの廃止
    サポートが終了している古いソフトウェアを使用し続けることは非常に危険です。これらのソフトウェアを早急に廃止し、サポートが継続している新しいバージョンに移行しましょう。
  • 定期的な脆弱性診断
    社内にシステムがある場合や、社内インフラを管理している場合にはシステムのセキュリティホールを定期的に診断するため、脆弱性診断ツールの使用やセキュリティ企業による脆弱性診断を検討しましょう。これにより、見落とされがちな脆弱性を迅速に発見・修正できます。


3.4. クラウドサービスの安全な利用


クラウドサービスの活用が進む中で、そのセキュリティ対策も欠かせません。
クラウド環境においても適切な設定とアクセス管理が求められます。

  • アクセス権限の管理
    クラウドサービスへのアクセス権限を必要最小限に絞り、従業員ごとに適切なアクセスレベルを設定します。これにより、内部不正のリスクを抑えられます。
  • クラウドデータの暗号化
    クラウド上に保存されるデータは、必ず暗号化をしておきましょう。これにより、不正アクセスがあってもデータを読み取られるリスクを軽減できます。


まとめ:今日から始める継続的なセキュリティ強化


社内セキュリティの強化は、一度実施して終わりではなく、継続的な見直しと改善が求められます。
特に中小企業にとっては、限られたリソースの中でどこから始めるかが課題になることが多いですが、基本的な技術的対策と明確なポリシー策定によって、大きな効果を得ることができます。


トリプルAでは、従業員教育やセキュリティポリシーの策定支援、そしてシステムやネットワークの脆弱性診断を通じて、企業のセキュリティ対策を全面的にサポートしています。
「どこから手をつけるべきかわからない」「従業員へのセキュリティ教育に不安がある」といった課題をお持ちの企業様も、ぜひ一度ご相談ください。


セキュリティ対策は「大きな一歩」ではなく、「小さな改善の積み重ね」です。
ぜひ、今日から一歩を踏み出し、社内の情報を守っていきましょう。

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